忍者ブログ
nozaのなんとなく週末日記。
カレンダー
04 2024/05 06
S M T W T F S
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31
フリーエリア
最新TB
プロフィール
HN:
noza
HP:
性別:
女性
バーコード
ブログ内検索
アクセス解析
[69]  [68]  [67]  [66]  [65]  [64]  [63]  [62]  [61]  [59

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

01.目覚めぬ少女

目の前に女性が立っていた。逆光で顔はわからない。けれど彼は彼女を知っていた。
しかし、これは夢だという確信があった。たびたび見る夢だった。彼は彼女を知っているが、彼女に関する記憶はない。
夢とは一体なんなのだろうか。希望なのか願望なのか。はたまた前世の記憶が甦えるのだろうか。

***

ある宿屋で目を覚ました少年。彼は朝にはめっぽう弱かった。だが、今朝は珍しく朝焼けと同時に目が覚めた。隣のベッドでは人一倍早起きの金髪の青年が、まだいびきをかいて熟睡している。少年は光の具合で漆黒にも群青にも見える短い髪をかきあげると、軽く伸びをした後、机の上の眼鏡を取るためにベッドから立ち上がった。まだ部屋は薄暗い。
彼はふと小さな声でつぶやいた。―あの夢はなんなんだろうか― …と。

***

宿屋1階の食堂には既に何人かの泊まり客が朝食を食べていた。ディナが情報収集もかねて宿屋の店主と雑談していると同室の相棒、先ほど隣のベッドでいびきをかいて寝ていた青年が下りて来た。
「珍しいな、お前がこんなに早く起きてるなんて」
彼の名はトルツ、少年と行動を共にする旅の仲間である。彼とは出会って5年ほどたつ。少年は3年前まで彼の家の居候だった。居心地が悪かった訳ではないのだが、居候の身では気を遣うこともあり、3年前アイシャブルー城の騎士試験を受けることを口実にトルツに黙って家を出た。
だが偶然にも同じ日にトルツは彼に黙って騎士試験を受けるために家をを出ていたのだった。
道中の宿屋で偶然再開し、騎士試験当日は2人してある事件に巻き込まれ、王女エリザフィアを助けることとなったが、おかげで2人して騎士試験に落選したのだった。王女は自分のせいで騎士試験に落選した2人を騎士試験に合格させて欲しいと彼女の父、つまり国王に懇願したがそれはかなわなかった。
見兼ねた王女の側近であり宮廷魔術師のシュドルクが「姫付」という新たな役職を設け、2人を王女の側に置くことを提案し、国王もそれに同意した。
この配属は2人を気に入った王女のわがままであったが、騎士試験に落選し、またターナ家(トルツにとっては実家)の世話にはなりたくないという彼らの希望と一致したため、二人は「姫付」としてついこのあいだまで城の姫の元で働いていた。
ある少女がこの国に現れなければ彼らは旅に出ることもなく、今でも城で暮らしていたはずだ。
その少女とは、同じ宿の別室で今はまだ眠っていることだろう。
「ディナ、トルツ!!大変なの!!」
食堂入り口の方から大声が聞こえた。食堂中の客ががその方向を見た。あきらかに自分たちの仲間の声であり、大声で名前まで呼ばれたので恥ずかしくなる。
「どうしたんですかジルファ、朝から公衆の場で大声を出して大迷惑です」
ディナは普段から物腰丁寧な話し方だが、ジルファとトルツに対しては刺々ししい物言いをする。
だがジルファと呼ばれた少女は気にせずにつづけた
「ユキヒが起きないの!!」
ディナは彼女の発言が予想以上に゛大変なこと゛ではなかったため一瞬戸惑った。
「だからどうしたんですか。昨日宿に着いたのが遅かったから、まだ熟睡してるんじゃないですか?」
「だって、ゆすったり、叩いたり、つねったりしても起きないのよ!!おかしくない?!」
「つねったり叩いたりしたのかよ…」
後ろからトルツが口を挟むがおかまいなしで彼女はしゃべり続ける。
「だいたいもうこんな時間よ、いくら昨日遅かったからって…」
ディナは自分が早起きだったのと、トルツがいつもより起きるのが遅かったことから、時間の感覚が曖昧だったが、もうすぐ昼になるというところだった。
「確かにな…とりあえず部屋に行ってみようぜ」
トルツがそう言って腰を上げた時、ディナは突然の胸騒ぎを感じた。
その胸騒ぎはただの思い過ごしであることを願いながら、トルツとジルファと共に彼女の眠る部屋に向かった。
その数時間後、思いがけない世界に踏み込むことになろうとは考えもしなかった。


Next→02.旅での出会い: https://prairial.blog.shinobi.jp/Entry/66/
PR

お名前
タイトル
文字色
URL
コメント
パスワード   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
非公開コメント

忍者ブログ [PR]

graphics by アンの小箱 * designed by Anne