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nozaのなんとなく週末日記。
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03.魔術師マイラ

「ちょっと!!」
トルツが部屋のドアノブに手をかけたところでジルファが止める。
「婦女子の寝ている部屋に入るわけ?」
トルツが呆れてため息をつく。
「入んなきゃどうすんだよ…」
そうは言ったものの、トルツは少し躊躇しながらドアを静かに開けた。

ドアを開けるとベッドが2つある。片方はジルファが寝ていたベッド。そしてもう片方が問題の少女が眠るベッドである。
部屋に入りベッドに近寄ると彼女の寝息が聞こえる。一見何も問題もなく、ただ寝ているだけとしか思えない。
「ユキヒ、起きろ」
トルツがユキヒの肩を軽く揺すりながら声をかけるが、全く起きる気配がない。「これは…」
ディナはユキヒの手に触れ何かに気づいた。
「彼女の中に魔術の気配を感じます」
2人は驚き、ディナを見る。
「どういうこと?」
ジルファがその沈黙に耐えられず疑問の言葉を投げ掛ける。しかしディナには答えることが出来ない。確かにユキヒの中から彼女以外の魔力を感じるのだが、それが何なのかまではわからなかった。
「呪縛系の魔術よ」
ドアの方から声が聞こえた。そこに立っていたのは昨夜一緒だったマイラという女性だった。彼女はスタスタとユキヒの枕元までやってくると、ディナと同じ様にユキヒの手に触れた。タイミングよく現れた彼女に対してディナ警戒する。
「私のせいかも知れないわ…」
彼女は困ったという顔をしながらそうつぶやいた。
「どういうことだ」
今度はトルツが疑問を投げ掛ける。ディナも彼女を警戒したものの、彼女の発言の意図がわからず次の言葉を静かに待つ。
「私は少し特殊な魔術を使用するの」
「特殊?」
゛特殊な魔術´といわれると、ディナにはいくつか思い浮かぶものはあった(例えば、19歳の彼を10歳くらいの外見にしているのも時魔術とい特殊な魔術である)
「私は自己啓発のための魔術を他人に掛ける仕事をしているの」
自己啓発の魔術…。トルツとジルファは首をかしげる。あまり聞かない魔術だが、ディナは聞いたことくらいはあった。
「悩みを抱える人に術をかけ、自分自身で解決させる…という?」
そういった仕事をしているから、昨日ユキヒに対し親身な受け答えをしていたのかと納得した。
「その一つ、夢の中で試練を与え、自分自身を高めるという魔術があるの」
「その魔術をうっかりかけちゃった~、とかそういうオチじゃないわよね?」
ジルファが冗談まじりにそう尋ねると、マイラは静かにうなずいた。
「職業病…ってやつかな~」
今までお姉さん的な落ち着いた雰囲気だった彼女に突然かわいらしさが生まれた。いわゆる゛テヘペロ´というやつだ。
うっかりで済まされるレベルの話ではなかった。3人は唖然となり、突っ込み様がないその状況に沈黙が続いた。
「と、とにかく…うっかり術をかけてしまったと言うなら今すぐその術を解いてください」
場の空気に飲み込まれそうになったが、ディナは体制を立て直して彼女にそう言った。
「それは出来ないわ」
彼女は即答し、彼らになぜかと聞き返される前に言葉を続けた。
「この術は自己啓発魔術の中でもかなり高度なもので、受け手にそれなりの精神力がなければ受けることが出来ないものなの」更に受ける者には必ず誓約書を書かせるという。
「誓約書…?」
「そう。『万が一戻れなかったとしても、自己の責任によるものとする』ってね」
「それでよく仕事として成り立つわね」
とジルファに言われ、彼女はだから成功報酬なのよと答えた。
「つまりどういうことなんだよ」
トルツがもどかしそうに尋ねる。
「つまり…あなた自身は術を解くことが出来ない…ということですね」
トルツもジルファも薄々感付いてはいたがディナがそれを言葉にしたことで、一気に場が氷ついた。
「そ」
「すげぇ重大なことを『そ』の一文字で答えんな!!!!」
トルツが激怒するが、マイラは平然と続ける。
「つまり、彼女自身が夢の中で起こる試練に打ち勝たなければ、彼女は一生眠り続けることになるわ」
ディナも怒りたい気分だったが、怒ったところでユキヒが目覚める訳でもない。
「本当にそれしか方法はないんですか?」
いくらずさんな術でも、なんらかの対処法は存在するはず…と、小さな希望を持ってディナな尋ねた。
「ないわけではないけど…、あまりオススメは出来ないかな」
彼女の言葉に3人が注目する。その方法とは…。

「彼女の夢の中へ?」
ディナはマイラが言った言葉をオウム返しに口にした。
「そ」
『そ』という肯定を意味する返答は彼女の口癖なのだろうか。そう思いながら一同は彼女の次の言葉を待つ。
「術を受けている人間に対し、試練を乗り越えることが困難と判断した場合、他の者がその者の夢に入り込み、手助けをすることも可能よ。」
ただ…とマイラは躊躇いがちに続ける。
「もしも、術を受けている者が試練を乗り越えることができなかった場合。その者の夢の中に入った人間も一生眠り続けることになるわ」
そこまで言い終えるとマイラは静かに彼らの発言を待った。
「その覚悟があれば…」
しばらく沈黙が続いたがそれを破ったのはディナだった。
「あなたは僕らをユキヒの夢の中に入らせることが出来るのですね」
「ええ…。でも成功する可能性は高くはないわ」
ユキヒはどんな夢を見ているのだろうか…不謹慎にもそんなことが脳裏をよぎる。
「俺が行く。待ってるだけなんて性に合わん」
トルツが何の躊躇いもなく名乗りを上げた。
「いえ、僕が行きます。精神的な問題なら力まかせなトルツよりも、僕の方がユキヒを手助けすることができるかも知れません」
いつもなら「なんだと」と言い返すところだが、彼も冷静に考え、その方がいいかもしれないと思った。
「別に1人じゃなくてもいいわよ」
マイラのその言葉を聞くと「なら私も!」とジルファも手を上げたが、さすがに3人はユキヒに負担がかかるとのことだったので諦めることにした。
結局ディナとトルツの二人がユキヒの夢の中へと入ることとなった。
方法は簡単だった。ただユキヒに触れて寝れば、マイラが彼らの夢とユキヒの夢を繋げるとのこと。

そして二人は夢の中へと誘われる

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